浜松地域スタートアップ連携促進事業
December 24, 2025

【遠鉄グループ × 株式会社パズルリング】-スタートアップインタビュー編-

地方都市にサービスを初展開、早期成約を実現したパズルリングの取り組み

全国的な協業や販路開拓を進めたいが、地場企業にどうやってアプローチすればいいかわからない。このことは、多くのスタートアップが直面する課題かもしれません。

ネット遺言*サービスを展開する株式会社パズルリングは、サービスの拡販に向け、ハマハブ!を活用。この度、遠鉄グループとの提携が叶い、地方都市への初展開を果たしました。

同社の代表取締役・山村幸広(以下、山村)氏に提携実現までのプロセスとハマハブ!の活用ポイントを聞きました。


*ネット遺言…法的な効力は持ちません

“最期の言葉”を届けるサービスを起点とし、人々のライフエンディングに寄り添う

山村氏

——まず、パズルリングの事業内容を教えてください。

山村氏:弊社は大きく分けて2つの事業を展開しています。1つは、ITやWebの知識を必要としている企業向けのコンサルティング。もう1つが、一般ユーザー向けの「lastmessage(ラストメッセージ)」というサービスの運営です。

lastmessageは、デジタル時代におけるネット遺言*とも呼べるサービスで、大切な方へのメッセージや秘密の情報、写真などをプラットフォーム上に保管できます。ご本人が亡くなられた際には、ユーザーが指定した方に自動で送信するというものです。

さらには、法的に有効な公正証書遺言の原案が作成できる「1人でできる!公正証書遺言」のサービスも提供。2020年3月のリリース以来ユーザー数を伸ばしており、約1万5,000人にご利用いただいています(※2025年11月現在)。

出典:lastmessage公式サイト

——なぜ、このサービスを始めたのですか?

山村氏:きっかけは、私が師と慕っていた方が突然亡くなったことでした。病院にかけつけたときにはもう話ができない状態で、惜しい想いをしたのです。残された側の気持ちや悲しみを少しでも癒せるような、生きていく糧となる“最期の言葉”を届けられないか。そう考えたことが、lastmessageの開発につながりました。

その後、機能を拡張しながら今日に至りますが、高齢化の加速とともに日本におけるlastmessageの必要性がますます高まっていると感じます。私たちはlastmessageの運営を通じ、人々のライフエンディングに寄り添うデジタルプラットフォームになっていければと考えています。

全国的なサービス拡大を目指しエントリー


——ハマハブ!を知ったきっかけは何でしょうか?

山村氏:株主であるSMBCベンチャーキャピタルから連絡をもらい、ハマハブ!の存在と、そこに登録されている案件を拝見したのが最初です。実は、ある企業のITコンサルティングで定期的に浜松を訪れていますので、ご縁だなと感じました。

——登録案件のなかで、遠鉄グループにエントリーした理由を教えてください。

山村氏:決め手は「ユーザーとの接点の広さ」ですね。遠鉄グループ様は、鉄道をはじめバス、不動産、金融など、多岐にわたる事業を通じて地域の生活者と日常的に関わっています。

これまで私たちは、首都圏・関西圏を中心にlastmessageの提携先を増やしてきました。今後は、より生活に密着したサービス展開を目指すべく、地域に顧客基盤を持つBtoC企業とも提携を進めようとエントリーしました。

——どんな点でlastmessageを提案できると感じましたか?

山村氏「デジタル上におけるユーザーとの新たな接点」になれる点です。lastmessageはライセンス提供を可能にしており、提携先企業のサブブランドとして展開できます。

生活者の行動がデジタルシフトするなか、オンラインでの集客手段やデジタル体験の提供手段として活用いただきたいと考えました。また、新たなデジタルサービスを短期間かつ低コストで立ち上げられる点でも、お役に立てると感じました。

初回ヒアリングから約半年で契約合意へ

——実際に、どのようなプロセスを経てlastmessageのライセンス契約が決まりましたか?

山村氏:まず、ハマハブ!の事務局担当者にプレゼンを行ってから遠鉄グループ様を紹介いただき、先方とは2〜3回の打ち合わせを経て提携が決まりました。この間、半年ほどです。

打ち合わせで検討したことは主に3つあります。1つ目は「どうやってユーザーに広げていくか」というマーケティング戦略。2つ目は、遠鉄グループ様の多様な事業のなかで「どの事業と組み合わせると効果的か」という点。そして、3つ目はデータセキュリティや契約内容の詳細です。

遺言や個人情報を預かるサービスですから、セキュリティは非常に重要です。ただ、私たちは楽天カード様や三井住友海上火災保険様といった大手企業との実績がありますので、そこでの厳格な審査をクリアしてきた実績が信頼につながりました。

「lastmessage for entetsu」として2025年10月16日より提供スタート 
出典:遠州鉄道株式会社の終活支援の新サービス「lastmessage for entetsu」へのライセンスを開始_株式会社パズルリング

——遠鉄グループとの協業で、とくに意識された提案ポイントはありますか?

山村氏:「先方の本業にどう寄与するか」を明確に描くことです。今回の場合、lastmessageを導入いただいたのは遠鉄グループ様の不動産事業部ですので、私たちのサービスをいかに本業のお客様増加につなげられるか意識しました。

不動産事業に付随するサービスの一環として、遠鉄グループ様では「相続サポートセンター」という相談窓口を運営しています。lastmessageのユーザーは相続との親和性が高いため、相続サポートセンターへの送客にも寄与しますし、不動産に関する相談の発生も期待できます。このように、本業へのインパクトを示すことを重視しました。

地方銀行や自治体との連携も目標に

——今回、ハマハブ!を利用してメリットを感じたのはどんな点でしょうか?

山村氏担当者につながる機会を得られたことです。地場企業とのつながりがほとんどないなか、ハマハブ!のようなプラットフォームがあることで、スタートアップでも対等に提案のテーブルに着けるのは素晴らしいことです。提案書を見ていただく機会を得られるだけでも、非常に大きなメリットを感じました。

——今回の提携を、今後どのように発展させていきますか?

山村氏:まだ始まって2カ月ほどですので、これから遠鉄グループ様がマーケティングを本格化されるのを楽しみにしています。より大きな視点で言えば、今回の実績を生かし、浜松の地方銀行や自治体との連携も広げていきたいと考えています。

出典:令和7年版高齢社会白書_内閣府

山村氏:日本では65歳以上の一人暮らしが増加傾向にあり、2040年には1,000万人を超えるといわれています(※)。少子高齢化の加速とともに、空き家問題や孤独死・孤立死といった社会課題が顕在化していますが、こうした課題にもっとも苦慮するのは地域の自治体です。

lastmessageを入り口とし、一人暮らしの高齢者への見守りや空き家対策の一助になるような仕組みを、自治体の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

※日本の世帯数の将来推計(令和6(2024)年 全国推計)より

——最後に、ハマハブ!を検討しているスタートアップへメッセージをお願いします。

山村氏:浜松は自動車産業をはじめ、製造業・技術系の企業が非常に多い地域です。静岡大学の理工系キャンパスや工業高校があり、優秀な人材が集まる土壌があります。IoTやハードウェアと結びつく技術を持つスタートアップは、とくに相性がよいと思いますね。ぜひハマハブ!にエントリーしてみてはいかがでしょうか?
ハマハブ!に掲載中の地域課題一覧はこちら
https://www.hamahub.com/biz-project

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