浜松地域スタートアップ連携促進事業
2026-08-18

【サンショウ株式会社×合同会社メイクスアンドシングス】-スタートアップインタビュー編

地域の懐に飛び込み、新規事業を共に創る。スピード連携を叶えた「ハマハブ!」正攻法

共創に取り組みたいが、ステークホルダーとの合意形成が難しい。プロジェクトが始まっても進みが遅い。そんな壁にぶつかったとき、参考にしたい事例があります。

 

未来思考のモノづくりを支援するデザイン会社・合同会社メイクスアンドシングスは、浜松市のマッチングプラットフォーム「ハマハブ!」を活用。自動車の純正シートカバーなどを手掛ける老舗メーカー・サンショウ株式会社と、“初回の面談で”連携合意し、新商品開発に向けた2つのプロジェクトを推進しています。

 

同社の代表である眞鍋玲氏(以下、眞鍋氏)に、短期間でプロジェクトを組成できた背景や、地場企業との共創を成功に導くための実践的なノウハウを伺いました。

 

サンショウ社の取り組みインタビューはこちら

町工場が誇る技術をデザインの力で新価値に昇華する

眞鍋氏

――はじめに貴社の事業内容について教えてください。

眞鍋氏:弊社は、工業製品デザインの知見を生かし、町工場の新商品開発や持続可能なモノづくりに伴走するデザイン会社です。特色としては、環境配慮材料の活用や廃材を材料循環させる仕組みづくりなど、サーキュラーエコノミー(※)の実装支援が可能なことです。

 

2026年3月には、町工場の販路開拓を支援する「町工場プロダクツ」事業を譲り受けました。デザイン、試作、量産、販路開拓のフェーズを一貫して伴走できる体制が、弊社最大の強みです。

 

※サーキュラーエコノミー|廃棄物をできるだけなくし、資源を循環させながら活用していくことを前提にした経済システム 引用:経済産業省特設サイト

メイクスアンドシングス社の自社製品。廃棄予定の米を樹脂化した新素材ライスレジン®︎を用いた「momo Rice Plastic Plate」と、その再生材から作り上げた貯金箱「ovo」

――新商品開発のプロデュース力を生かし、現在、ハマハブ!を通じた共創プロジェクトにも取り組んでいますね。

 

眞鍋氏:自動車の純正シートカバーや内装品を手掛ける老舗メーカー・サンショウさまと連携が叶い、2025年4月から先方の新商品創造活動に参加しています。

 

新商品創造活動は、サンショウさまが社内で毎年行っている新商品開発の取り組みです。外部のデザイナーやサプライヤーも多数加わるなか、私もその一員として、サーキュラーエコノミーを切り口とした提案を行っています。

 

2025年度は最終的に2つの案が試作段階に進みました。

 

――具体的にはどのような案ですか?

 

眞鍋氏:1つは、シートカバーなどの製造過程で生じる残布をアップサイクルする「ネオ遠州織物」プロジェクトです。地元の繊維産業を通じて端切れを糸に紡ぎ直し、もう一度新しい生地として織り直します。

 

実は浜松は国内有数の織物産地で、ここで生産される「遠州織物」は国内外で高い評価を得ています。これにサンショウさまの取り組みを掛け合わせると、廃材が地域ブランドに生まれ変わる物語として体験価値に昇華できます。「ネオ遠州織物」と銘打ち、完成車メーカーへの提案や他業種とのコラボレーションにつなげやすい形にしました。

 

2つ目のプロジェクトは、車載部品の一部を環境配慮材に置き換える取り組みで、量産化に向けた検討が現在も進んでいます。

暮らしと遊びの総合展示会「FIELDSTYLE」にネオ遠州織物で制作したキャンプ用の敷物を展示。一般消費者のリアルな声を製品開発に還元した     出典:FIELDSTYLE TOKYO に出展いたしました - サンショウ株式会社

「越境」への挑戦と、事務局の壁打ちで見えた可能性

――首都圏を拠点に活動してきた貴社が、浜松の企業との連携を考えたきっかけは何でしたか?

眞鍋氏:「越境」をキーワードに活動する経営者とのご縁で浜松に通いはじめ、製造業が集積するこの地のパワーに魅了されました。イノベーションハブ施設の「FUSE」を拠点に地場企業との共創機会を探っていたところ、偶然にも東京のオフィスでハマハブ!のチラシを発見。サイトを見にいくと、サンショウさまが「新商品の創造」を掲げていました。弊社のスキルセットが合致すると考え、すぐにエントリーしました。

JR浜松駅より徒歩約6分、浜松いわた信用金庫が運営するFUSE

――そこからどのように伸展しましたか? 

眞鍋氏:まずは、ハマハブ!事務局によるヒアリングがありました。弊社の技術や強み、実績をもとに協業可能性を整理し、サンショウさまにも共有してくれたようです。

そのあとすぐにサンショウ本社での初回面談がセッティングされたのですが、その場で意気投合。先方からは、実務担当者の方々が6〜7名も同席してくださり、2時間半にわたり具体的な意見交換ができました。

ついには「ぜひ一緒にやりましょう」と、またたく間にプロジェクトが結成されました。初回面談からこれほどの熱量で歓迎していただけるとは。私も、しっかり存在価値を発揮しようと、意気込み高くプロジェクトに参画しています。

――今回の連携をスムーズに進められた背景には、何があると感じますか?

眞鍋氏:ひと言でいうと、共創先である企業や土地への「リスペクト」だと考えています。提案するデザインの魅力も重要ですが、もっと大事にしていることが2つあります。

1つは「行動力」です。展示会や観光スポットなど、何度も現地に足を運ぶこと。さまざまな接点が生まれますし、コンセプト作りのヒントも得られます。たとえば先の件では、遠州織物の魅力を知っていることが鍵になりました。

2つ目は「実利への寄与」です。結局のところ、私たちの提案が共創先の利益にいかに寄与できるかが重要だと考えています。そのため弊社では、単なる造形の提案にとどまらず、売上規模の試算やビジネスモデルのデザインまでを見据えた提案を徹底しています。

――共創先の事業に深くコミットされる姿勢が素晴らしいです。

眞鍋氏:サンショウの皆さまはアイデアを積極的に共有しながら、外部の意見も柔軟に取り入れてくれます。そうした体制があるおかげで、私も販促やPRに踏み込んだ提案を行えるのです。

浜松では展示会やセミナーもよく主催しています。JR浜松駅前にある遠鉄百貨店さまでの催事「Makers Market 2026」を自ら企画し、サンショウさまの商品を販売する機会も創出しました。

仕事をいただく立場に留まらず、ビジネス貢献に向けて地域と共に汗をかくこと。それは信頼関係を築くために欠かせない「リスペクト」の1つの形だと思います。

サンショウとアニメのコラボ商品、BtoCの販路開拓として出展       出典:合同会社メイクスアンドシングスのプレスリリース

業界の変革期に向き合う外部パートナーとしての役割

――自動車業界との共創という点では、どのような課題を感じていますか?

眞鍋氏:自動車業界は大きな変革期にあり、日本の基幹産業としての危機感と重圧が強まっていることを感じます。環境対応など喫緊の課題にも向き合わなければいけません。

ただ、そうした重圧から萎縮してしまっては、新しい発想が生まれづらい側面も。私たちのような外部パートナーには、新たな提案を通じて会議を活性化させるなど、まさに外の目としての役割が求められていると思います。

たとえば工法1つとっても、協力会社間で設備をシェアすれば、開発コストを抑えられそうな場面もよくあります。業界に眠っている知見を持ち寄れば、抜本的に変革できる物事もあるはずですから、可能性を探索していきたいと思います。

――最後に、2年目のプロジェクトに向けた展望をお聞かせください。

眞鍋氏:直近の目標は、現在開発を進めているプロジェクトを商品化につなげていくことです。自動車業界での採用実績を作れるよう、引き続き尽力します。

私個人としては、地域の内外にあるポテンシャルを掛け合わせる、サプライチェーンの「媒介者」になることが目標です。これまで接点のなかった異業種や地域同士を魅力的なストーリーで結び、新価値の創造につなげます。

そのような関係構築を、これからも浜松の皆さまとともに進めていけたらと思います。

地域・行政課題も一覧できる、エントリーページはこちら

https://www.hamahub.com/entry

一覧に戻る