浜松地域スタートアップ連携促進事業
2026-07-30

【浜松市役所インタビュー】

スタートアップと地域の“使わなきゃ損”な共創プラットフォーム「ハマハブ!」の活用法とは?

地場企業や行政と、スタートアップとの連携を促進し、地域課題の解決に取り組むためのマッチングプラットフォーム「ハマハブ!」。2025年(令和7年)8月のリニューアルでは浜松市の行政課題が新たに追加され、プロジェクト組成の強力な後押しとなっています。

エントリー件数に対するマッチング面談率は50%を越え(※2025年度実績)、年間を通じてさまざまな実証実験や共創が生まれています。

ただ「浜松市との協業はどんなイメージ?」「実際の進み方はスムーズ?」など、気になる点も少なくありません。

そこでこの記事では、とくに行政課題に焦点を当て、ハマハブ!の具体的な活用メリット、実際のプロジェクト例までを一挙に解説します。 

浜松市スタートアップ推進課の永井 佑典氏、金子 武史氏、伊藤 佑眞氏に話を伺いました。

“起業のまち”の再興を目指して。浜松市がスタートアップ支援に注力する背景

永井氏

――浜松市は全国的に見てもスタートアップ支援に注力している自治体です。まずはその背景について教えてください。

永井氏: 浜松市は、チャレンジを後押しする「やらまいか精神」の風土があり、スズキやホンダ、ヤマハをはじめとする世界的企業を輩出してきた“起業のまち”です。しかし近年では、廃業率が開業率を上回る年が目立ち、市の基幹産業である製造業の製造品出荷額も横ばいが続いています。 

この危機を打開し、新たな産業の創出と既存産業の高度化を図るため、市は「スタートアップが生まれ、集まり、地域と共に育つエコシステム」の構築を掲げ、施策に取り組んでいます。

2025年4月に更新された5カ年戦略では、金融面を含め、PoCからスケールアップまで一気通貫の支援体制を整えています。

――一気通貫の支援体制は、スタートアップにとって大きな魅力ですね。

永井氏: この全面的なサポート体制を敷いたうえで、私たちがスタートアップの皆さまにぜひ活用していただきたいのが、「共創フィールドとしての浜松市」です。 

国内で2番目に広い市域に都市部から過疎地域までを抱き、海・山・川・湖などの自然環境を有する浜松市は、まさにオープンイノベーションに適した環境といえます。「国土縮図型都市」と呼ばれるように、浜松市が解決したい地域課題は、日本全国の社会課題に通じるものばかりです。

この地の利と多様なアセットに恵まれた浜松市で、地域課題の解決に本気で向き合い、まだ世の中にないソリューション開発に挑んでほしいと考えています。

――その中で「ハマハブ!」は、どのような位置づけですか?

永井氏: ハマハブ!は、戦略にもある「オープンイノベーションの推進」の中核をなす、スタートアップと地域のマッチングプラットフォームです。サイト上に「地場企業の課題」と「浜松市の行政課題」の両方が常時掲載されています。

最大の特長は、スタートアップの皆さまがいつでもエントリーできる点にあります。公募型プログラムのように募集期間が限定されていないため、事業のフェーズや自社のタイミングに合わせてアプローチが可能です。

金子氏

金子氏: さらに、運営目的を「マッチング成果の最大化」に置いている点も特徴的です。

事前ヒアリングでの提案内容の整理から、面談への同席、相互の文化の違いを埋める“翻訳”に至るまで、事務局側がサポートしています。

面談を経て連携が決まった後は、当事者間のやり取りとなりますが、必要に応じて私たちも調整に入ります。事務局が積極的に関与するため、「ハマハブ!は仲人(なこうど)のように手厚いですね!」とよく驚かれますね。

伊藤氏

伊藤氏:マッチングが成立した後は、専門家による伴走支援(※)もありますし、補助金も用意しています。

活用できる補助金は2種。サービス・商品の導入に対しては最大50万円、プロジェクトに対しては最大400万円を交付します(いずれも補助率1/2)。

皆さまの資金的・リソース的な負担を抑え、低リスクで共創のスモールスタートが切れる体制にしています。

※伴走支援について2026年度は申請が満了しています。

――手厚いサポート体制ですね。なぜ、従来の公募型プログラムから設計を変えたのですか。

永井氏:これまでの実績を踏まえ、さらに実効性を高めたかったことが理由です。

過去の枠組みでも、さまざまなプロジェクトが生まれました。実証実験期間中にプロトタイプやITツールなどが開発され、そこから庁内導入や社会実装に進んだ案件も多々あります。

ただ、公募期間が区切られ、審査も複数段階にわたるので、突発的なニーズや課題を拾いにくい側面があったのです。継続的な出会いを重視し、柔軟に連携を生み出すため、「いつでもつながれる仕組み」へとリニューアルを図りました。

――具体的には、どのような行政課題が掲載されていますか?

永井氏:2026年度は常時20ほどの行政課題が掲載されており、テーマは実に多彩です。以下に一例を紹介します。

  • 老朽化した下水道インフラの点検DX(下水道施設課)
  • 「隠れ心房細動」を発見し、医療機関につなぐデバイス開発(ウエルネス推進事業本部)
  • ごみの収集・運搬の「事故ゼロ」を目指すスマートルーティング(平和清掃事業所)
  • 首都圏在住・浜松市ゆかりのU-30に関するUIJターンの促進(浜松市東京事務所)

発案元の部門も多様です。ウェルネス、都市整備、農林水産、環境といった事業部門はもちろん、産業振興課や東京事務所も協業先を募集しています。

連携の形は、PoCから実証実験、サービス開発・実装まで幅広く、面談を通じて双方にとって最適なゴールを一緒に考えていきます。

一次回答は数日で。担当課も共に汗をかく、スピード感と熱量を生む共創の仕組み

――ハマハブ!を通じた連携の実績について教えてください。

永井氏:2025年度はハマハブ!全体で138件のエントリーがありました。そのうち半分以上がマッチング(面談)に進み、実際のプロジェクト組成に至ったのは13件です。約10%という決して低くない確率で、具体的な連携が生まれています。

――行政との連携というと「意思決定に時間がかかるのでは」とイメージしてしまいます。実際はいかがですか?

永井氏:スピード感のギャップが共創のハードルになり得ることは、私たちも意識してきたポイントです。過去10年以上にわたるスタートアップ支援の取り組みを通じ、以前よりも迅速に動ける体制が、庁内でも整いつつあります。

事実、ハマハブ!ではエントリーをいただいてから一次回答を出すまで、数日以内というケースがほとんどです。事務局がエントリーの内容を確認するなかで、課に伝わりやすい形に整理していることが、迅速な意思決定を支えています。

マッチング後も、打ち合わせのセッティングやフィールドの提供など、担当課が積極的に対応してくれるため、スムーズに進む印象です。

金子氏:直近でもエントリーから2週間という速さでプロジェクト組成に至った案件がありました。環境政策課とフォレックスロボティクス社の取り組みです。

環境政策課は「低コストなIoT罠による外来生物の防除(捕獲)」という課題を掲載していました。そこに、IoT開発や機械学習を用いた物体検知に強みを持つForex Robotics(フォレックスロボティクス)社がエントリーし、2回目の面談で連携が決まりました。

環境政策課の掲載課題を一部編集

――これほどスピーディーに進んだ理由は何ですか?

金子氏:スタートアップ側の柔軟な軌道修正と、行政側の前向きな姿勢にあると考えています。

まず初回面談の場で、スタートアップ側が複数のプランを提示してくれたことで、解決したい課題の整理が進みました。プランには他自治体での実施例に基づく具体的な進め方や、費用の概算が掲載されており、取り組み方がイメージしやすい提案でした。

現場のニーズをくみ取り、フォレックスロボティクス社も提案内容をピボット。わずか1週間でプランを再構築してくれました。この柔軟な対応が「共に実装まで走れる」という信頼関係につながり、早期合意に至ったと感じています。

「この技術なら、別の課題にも使えるかもしれない」と、担当課が、抱えている課題やスタートアップと真摯に向き合った結果、連携内容をアジャストする結果になりました。現在、域内防衛ラインにおける外来生物の生息把握というテーマに向け、実証実験が始まっています。

――このスピード感を実現している秘密は何でしょうか?

永井氏:ハマハブ!では「各担当課の自発性」を重視しています。現場が本気で解決策を求めているからこそ、自立的にプロジェクトが回ると考えています。

実はハマハブ!の行政課題は、いずれも各担当課から掲載の要望があったものです。どのテーマの根底にも「スタートアップの皆さまと一緒に解決に取り組みたい」という担当者の熱意があります。

担当者レベルで「スタートアップと協業することで、有効な解決策を見つけていける」という認識が浸透しています。

迷ったら、まずは「お問い合わせ」を!スタートアップ推進課からのメッセージ

――スタートアップがハマハブ!を利用するメリットについて、行政側としてはどのように考えていますか?

永井氏:スタートアップの皆さまにとっての最大のメリットは、「政令指定都市の現場で課題解決に取り組んだ」という実績の獲得だと思います。ここで培った実績は、他のフィールドへ事業を展開していく際の、確かな足がかりになるはずです。

伊藤氏:繰り返しになりますが、ハマハブ!は「いつでも自由」に「無料で」エントリーが可能です。通常、行政の事業に参画するには、入札などの厳しい基準がありハードルが高いところ、ハマハブ!を通じればスモールスタートが可能です。

手前味噌ですが、「活用しなきゃ損」な仕組みだと思っていますので、ぜひエントリーいただけたらうれしいです。

――最後に、応募を検討しているスタートアップの皆さまにメッセージをお願いします。

金子氏:ハマハブ!に掲載されている行政課題は、ある意味で浜松市が自分たちだけでは解決できない「弱み」を世の中に公開していることになります。行政だからとハードルを高く感じず、皆さまの熱い想いと革新的な技術を、ぜひ私たちにぶつけてください。

伊藤氏:現場の担当課は、本気で課題解決を望んでいます。行政側の凝り固まった発想を壊すような、想定外のアイデアや意外性のあるアプローチをお待ちしています。皆さんの成長とともに地域課題が解決していくような循環を一緒に創り上げましょう!

永井氏:「自社の技術がどの課題にフィットするか分からない」「エントリー内容に迷っている」という方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、総合窓口の「お問い合わせ」フォームからお気軽にご相談ください。私たち事務局が壁打ち相手になります。迷ったら、まずはご相談を!

地域・行政課題も一覧できる、エントリーページはこちら

https://www.hamahub.com/entry

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