浜松地域スタートアップ連携促進事業
2026-07-30

【掲載企業インタビュー第3弾】天龍木材株式会社

120年の歴史を持つ老舗木材メーカーが挑む、新商品開発と業務属人化からの脱却

「自社技術を新しい市場に転用したい」「属人的な業務をデジタル化したい」。そんな複数の課題に対し、スタートアップとの協業というアプローチで突破口を開いた老舗企業があります。1907年創業、まもなく120周年を迎える総合木材メーカーの天龍木材株式会社です。

ハマハブ!を通じてスタートアップと共に取り組んだ課題は、300ヘクタールに及ぶ社有林の管理効率化。ITツールを導入し、デジタル化を進めました。

伝統的な業界の企業でありながら、どのようにしてスタートアップとの共創を推進したのでしょうか。営業企画部長の鈴本健夫氏(以下、鈴本氏)にお話を伺いました。

歴史ある企業が抱えていた市場開拓の壁

鈴本氏

――まずは、貴社の事業内容と歴史について教えてください。

鈴本氏:弊社は木材商として1907年(明治40年)に創業した総合木材メーカーです。現在は大きく分けて3つの事業を展開しています。

  • 木材事業:国内外から丸太などを調達し、素材として供給。戦前から海外木材の輸入に先駆けて取り組み、独自のネットワークを保有している
  • 建材事業:学校や店舗などの非住宅施設向けにフローリングや壁材などを提供。自社の職人を手配し、現場での床貼り施工まで一貫して請け負う
  • プレカット事業:お客さまが希望する寸法や形状に木材を切断・加工する。専用の自社工場を持ち、木造住宅の骨組みとなる柱や梁を全国の現場へ販売

長年の経験と目利きによる品質の高さをご評価いただき、全国のお客さまと取引をさせていただいています。

ニーズに合った材料・加工の提案に強み

――確固たる事業基盤を持っている一方で、外部との共創を模索しはじめた背景にはどんな課題があったのでしょうか。

鈴本氏:人口減少による住宅着工件数の減少など、国内の木材業界全体が需要縮小の課題に直面しています。弊社も例外ではなく、木材の新しい需要を創り出す必要性を強く感じていました。

コロナ禍が落ち着いたころから、展示会へ出展したり、異業種交流に出かけたりと、販路開拓に取り組んできました。しかし、活動してみると大きな壁にぶつかります。

「木材を使って何か新しいものを作りたい」という潜在的なニーズが多かったのです。それらを具体的なアイデアや製品に落とし込むための企画力や提案力が、我々の側にも不足していました。受注や協業には至らない商談が重なっていました。

――建設・建築業界の垣根を越えた提案が進みづらかったのですね。

鈴本氏:長年の間に業務の進め方や発想が固定化されてしまったことを痛感しましたね。そんななか、地元の展示会で見かけたのがハマハブ!です。

スタートアップの先進的な考え方に触れることがヒントになると感じ、登録を即決。浜松市が運営している安心感も、社内決裁の後押しに。さらに、課題の掲載からマッチングの成立まですべて無料で利用できるので、渡りに船だと感じました。

事務局のアドバイスを受け、実効的な課題を掲載。決裁者自らアプリのトライアルも

――ハマハブ!には、どのようなテーマ(課題)を掲載していますか?

鈴本氏:事務局のアドバイスもあり、幅広く興味を持ってもらうための「抽象的なテーマ」と、すぐに提案をもらいやすい「具体的なテーマ」の2つに分けて掲載しています。

  • 抽象的なテーマ「木質建材の新商品開発」:大学などの研究開発用をはじめ、試作材料の検討段階から共創に取り組む
  • 具体的なテーマ「社有林の管理・有効活用」:浜松市北部の山間部を中心に、長野県や群馬県に点在する約300ヘクタールの社有林に対し、有効活用や日々の管理手法について提案を募集する

天龍木材掲載テーマ

――それぞれ性質が異なるテーマですが、社有林の管理となると喫緊の課題に感じられます。

鈴本氏:山中の複雑な境界線や作業道、間伐材の集積場所など、現場特有の情報把握がベテラン社員の知見に依存していました。等高線や航空写真などを森林簿に重ねて見る必要があり、立体的な情報の読み解きには一定のスキルが必要だからです。

そのうえ現地の情報は手書きの地図に記録しており、解釈がより困難でした。最近は盗伐のニュースも聞きます。巡視業務をデジタルに移行し、次世代に引き継いでいくことが急務でした。

――そこからどのような提案が得られましたか?

鈴本氏:位置情報アプリや共有地図アプリのITスタートアップ、はんぽさき社から森林管理に特化した地図アプリ「LivMap(リブマップ)」の提案をもらい、2026年3月から導入しています。

LivMapは、森林管理に必要な現地情報を記録でき、端末を持った社員の動態をリアルタイムに把握できるアプリです。スマートフォンやタブレットで操作でき、サブスクリプションで安価に利用できます。

さらに弊社の実務に合わせ、ソースとして取り込む地図などのデータは選択が可能とのこと。トライアルを通じて現場課題を洗いながら、システムを作り込むことにしました。

LivMap上で小班や道順が確認でき、地点に写真やメモを登録できる

――ITツールを検討するのは、これが初めてですか?

鈴本氏:いえ、社有林管理に関しては以前から専用機器を導入していました。しかしGPS精度に難点があるなどして現場に定着せず、使われなくなってしまったことは苦い経験です。

今回のLivMapは公共の道路管理や林業の現場などで活用実績があります。はんぽさき社の方は弊社の悩みに対する理解が早く、対応も柔軟でスピーディ。データの構築からアプリのトライアル、本導入まで、わずか3カ月で進められました。

――社内の決裁は難航しませんでしたか?

鈴本氏:実は、難なく承認が降りまして。経営陣にとっても社有林管理の属人化解消は優先度の高い経営課題であるためです。それに加え、私自身も導入効果を確認しながら進めたことが奏功しました。

正月明けで氷点下となる実際の山林に分け入り、アプリの動作を確認した日もあります。確信をもって社内でプレゼンしたので、納得を引き出せたのだと思います。

――ハマハブ!への参加を通じ、他の掲載企業(地場企業)とのコラボレーションも生まれたそうですね。

鈴本氏:ハマハブ!に登録している浜松の2社からお声がけをいただき、木材製品の商品開発というもう1つのテーマに取り組んでいます。ハマハブ!主催のイベントに参加したところ、ご縁がつながりました。

児童福祉業界と自動車業界という、これまで接点を持てなかった業界から相談をいただき、うち1社にはすでに試作品を納品しています。

業務効率化から価値創造へ、共創が切り拓く可能性

――実際に現場でツールを使ってみて、社員の方の反応はいかがですか。

鈴本氏:若い社員を中心に、ツールを使いこなしているので驚いています。直感的に操作が分かってしまうようで、現地までのナビや調査票の記録など巡視作業をサポートしてくれます。

使いやすいツールさえ用意できれば、業務に慣れるのも速い。徐々にではありますが、やる気のある若手にも社有林の巡視業務を任せていけたらと考えています。

――素晴らしい前進ですね。では最後に、今後の展望をお聞かせください。

鈴本氏:まずはLivMapを活用して社有林のデータを蓄積していくことが第一です。近い将来には、蓄積したデータを活かし「J-クレジット制度(温室効果ガス排出削減量の取引制度)」などの新たな収益化にも取り組んでいきたいと考えています。

事業全体としては、異業種とのコラボレーションを増やし、自社の商品開発力を高めていくことが目標です。スタートアップの皆さんのアイデアと、弊社のノウハウを掛け合わせることで、木材のさらなる価値を生み出していきたいですね。

ハマハブ!を通じて、予想もしなかった出会いや解決策が見つかりました。新たな打ち手を探している伝統的な地域企業の方がいらっしゃれば、ぜひ一度事務局に相談してみてはいかがでしょうか。

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https://www.hamahub.com/entry

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