浜松地域スタートアップ連携促進事業
2026-02-24

【掲載企業インタビュー第1弾】株式会社ヤマト製作所

“答え”を探す前に“問い”を磨く、2つの新規事業を育てたヤマト製作所のハマハブ!活用法

「自社の技術を新しい市場に結びつける方法がない」「新規事業に対する社内の機運を高められない」。多くの中小企業が直面するこの壁を、言語化の力で乗り越えてきた企業があります。創業60年を迎えるオートバイ部品メーカー、株式会社ヤマト製作所です。

近年は「ハマハブ!」などのプラットフォームを活用し、積極的に外部と連携しながら、2つのプロジェクトを事業化へと導いています。そんな同社も当初は、自社の技術のアピールが強くなってしまい、なかなか共創に至らなかったそう。

どのようにして「課題(問い)」を言語化し、パートナーを得て事業を形にしてきたのか。代表取締役の小木丈生氏(以下、小木氏)と、新規事業を担当する宗田涼氏(以下、宗田氏)に、リアルな軌跡と活用ノウハウを伺いました。

市場の危機を乗り越えるために。既存技術にとらわれず、新体制で挑む新規事業創出

小木代表(写真右)、宗田氏(写真左)

――まずは、御社の事業内容と、新規事業に取り組まれるようになった背景について教えてください。

小木氏:弊社は1966年創業で、2026年に60年目を迎えます。主にオートバイのエアクリーナーという部品の製造販売を行っており、国内の二輪メーカーに直接納入する、いわゆる一次サプライヤーです。

ただ、事業の柱が一本だけというのは会社として心もとないことです。とくに昨今はモビリティの電動化や知能化、サービス化に伴う部品変更など、世の中の動きが激しくなっています。そのような市況のなか、弊社でも第2、第3の柱を立ち上げることが急務でした。

そこで新規事業の取り組みをはじめたのが2016年のこと。会社の設立50周年がよい機会と考えてのことでしたが、当時はなかなか芽が出ませんでした。今考えると、主な要因は「自前主義」にあります。既存の技術を活かすことにこだわりすぎたのではないか、と。

そこから考えを改め、2023年に経営企画室を立ち上げました。そして、30代を中心としたメンバーでチームを構成し、本業と並行しながら新規事業開発に取り組んでいます。

宗田氏:私は、新規事業担当としてヤマト製作所にキャリア入社しました。活動のスタートは、「何ができるか」をゼロから検討しなおすこと。自社の強みを洗い出すとともに、参入すべき市場の見極めを進めていきました。

最初は既存のエンジン向けフィルター技術の転用から考えはじめたのですが、そこから視野を広げていき、今では医療や介護分野など毛色の違う領域にも挑戦しています。

主力のエアクリーナーと、樹脂(プラスチック)の加工製品

――新規事業の創出にマッチングプラットフォームを活用しているのはなぜでしょうか?

宗田氏:社内の知見だけでは足りない部分が出てくるためです。新しい事業を作るためには、コト(サービス)づくりに踏み込む必要性を感じていましたが、それは弊社ではまだ経験のないことでした。IoTやDXといったデジタル領域の知見も必要です。これらを補うために外部連携が必要と考え、プラットフォームの活用を検討していました。

――マッチングプラットフォームにはさまざまあるかと思います。

宗田氏:いろいろと検討してきて、目的別に使い分けています。たとえば、製造業向けのマッチングプラットフォーム。こちらは全国の中堅企業が多く登録しており、共同研究開発や材料開発に向けて活用しています。技術力のある製造業と組むと産業向けの開発がしやすく、お互いに安心感があるためです。ただ、腰を据えてじっくり取り組む分、スピード感を持って「まずは実験してみよう」という動きにはなりにくい側面も。

そこで注目したのが、浜松市が提供しているプログラムです。「新規事業の型」を学びながら、市のコネクションを活かした横のつながりが得られたら理想的だと考えました。

2024年には「挑む中小企業プロジェクト」に参加。これは、スタートアップ起業を専門とする講師・メンターから新規事業の作り方を学ぶ、約半年の実践型プログラムです。この場を通じて自社の課題や強みを言語化・整理できました。

次は事業化に取り組もうという矢先に、ハマハブ!を知りました。地域密着型でありながら、スタートアップとのマッチングに特化しており、スピーディーに実証実験を進められる点が魅力で、参加を決めました。

「使い道が分からない」と言われて。「問い」を磨き上げた壁打ちプロセス

――実際に「ハマハブ!」を活用されてみて、いかがでしたか?

宗田氏:最初は苦戦しました。当初、「有害物質を除去するフィルターが作れます」「樹脂用の射出成形機が使えます」といった自社のアセットをそのまま掲載していたためです。しかし、事務局との打ち合わせで、「これだとスタートアップには響きませんよ」と指摘されました。

――具体的に、どのような指摘だったのでしょうか?

宗田氏:「『射出成型機がある』といっても、スタートアップはどう使っていいかわかりません。御社の技術が、どういう課題に活きるか分かるように書き換えましょう」と。この単刀直入なフィードバックがとても勉強になりました。

そこで、事務局のアドバイスを受けながら、掲載内容を「事実の羅列」から「解決したい課題」へと更新しました。

たとえば、単に「フィルター技術がある」ではなく、「畜産由来のアンモニア臭を、エネルギーを使わずに除去するシステムを作りたい。そのための環境測定技術を持つ企業はいませんか?」というように、具体的な「問い」に変換していきました。

その過程で気付いたのは、いかに自社技術をスタートアップの方の関心ごとに寄せられるか。事業案にストーリー性があり、どれだけの社会的インパクトがあるかが大事ということです。初めのころは、その温度感がわかりませんでしたが、粗くてもまずは自社の方針や課題を掲載してみてよかったと思います。事務局との打ち合わせや外部の反響を通じ、どう言語化すればよいかが見えてきました。

4回の打ち合わせを経て更新された募集内容 ※2026年2月現在

――事務局との打ち合わせを経て、“伝え方”が研ぎ澄まされていったのでしょうか?

宗田氏:はい。掲載内容を更新する過程で、自分たちが本当にやりたかったことや、事業の方向性が言語化されていきました。そして、「こういうことできませんか?」という具体的な問いを立てられたことが、弊社からの提案として機能しています。

新規事業は不確実性が高いからこそ、世の中をよくしていきたいという“志”を共にした会社同士で取り組むことが重要だと思います。掲載内容が具体的になることで、中身に賛同してくれた企業がエントリーくださいます。

課題の言語化がもたらした成果と社内への副次効果

入社後は調達の仕事からスタート、製造現場との信頼関係を培ってきた宗田氏

――事務局との壁打ちで「問い」を磨いたことは、社内にはどのような影響を与えましたか?

宗田氏:とくに大きな変化は、チーム内で共通言語や共通認識が持てるようになり、メンバーの自発性が育ってきたことだと思います。

新規事業の取り組みは、まず小木社長が全社に向け「なぜ新規事業が必要か」を何度も説明し、土壌を作ることがスタート地点でした。その上で私が詳細な資料を用意し、チームに対して「この課題解決のために、この事業をやります」と説明していました。

必要な取り組みだと理解は得られるのですが、実務を前に進めるためにはいま一歩。その後、ハマハブ!を通じ「誰の、どんな課題を解決するのか」というストーリーを突き詰めたことで、メンバーにもユーザー像が共有されたのです。

――実際に困っていることや解決後の喜びなど、ユーザーの“顔”が見えたことで、メンバーの意識が変わったのですね。

宗田氏:今では会議のなかで「ユーザー視点ならこうすべきだ」「相手の要望はこうだから、うちはここまでやろう」という議論が生まれるようになりました。 

製造業の現場の言葉と、取引先の言葉、そして経営者の言葉――新規事業には、異なる文化を翻訳して繋ぐ「ヤタガラス人材」が必要だといわれます。今回のプロセスを通じて、メンバー全員が関係者間の言葉を行き来しながら自発的に行動できる人材へと成長しているのを感じます。

――そのチームの熱量が、具体的な成果にも繋がっていますか?

宗田氏: このプロセスで培った推進力のおかげで、現在2つの新規事業プロジェクトが、市場投入を見据えた実証実験のフェーズまで進んでいます。

1つは畜産由来の悪臭対策となる、電力不要のフィルタレーションシステムの開発です。ガス・臭気・有害成分を多段階で除去できる構造の事業化を目指し、畜産法人の方々と実証実験を進めています。

もう1つは酸素ボンベを携帯するための医療用キャリーの筐体デザインです。弊社では高性能なモノづくりは得意ですが、デザイン性が課題になります。ハマハブ!を通じ、Webブラウザ上で動作する高度な3Dモデリングツールの提案をいただき、医療機関との協業・試作において活用を検討しています。

「レントゲンに映る樹脂」地元の医療機関との共創も進む

――経営企画室の立ち上げから3年、すばらしい成果です。これからハマハブ!をどう活用していきたいですか?

宗田氏:新規事業を進めていくと、必ず新しい壁にぶつかります。そのとき困ったらいつでも戻れる場所、それがハマハブ!だと思っています。浜松発の新規事業を共に作り上げようと、志を同じくする企業やスタートアップが集まっていますので。ここを太い幹として、そこから新しい枝葉(事業)が次々と広がっていく、そんなサイクルが生まれるといいなと思います。

――幹となる場所があるから、安心して枝を伸ばせますね。

宗田氏:はい。だからこそ、地域企業の参加がますます増えていくとうれしいです。競い合うくらいの気持ちで、まずは飛び込んでみる。そうやって切磋琢磨できる仲間が増えることが、浜松、ひいては自社の成長に繋がると信じています。

小木氏:経営者の立場で意識しているのは、新規事業を「コスト」ではなく「投資」と捉えることです。既存事業の感覚だと、どうしても費用対効果や短期的な利益を求めてしまいがちです。しかし、新しい挑戦に失敗はつきものですし、すぐには芽が出ないこともあります。

それでも、外部の知見を取り入れ、社内の意識を変えていくことは、間違いなく未来への資産になります。その一歩目をハマハブ!から踏み出してみてはいかがでしょうか?

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https://www.hamahub.com/entry

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